この法律ができた背景
この法律ができるまで、韓国の暗号資産取引所を規律していたのは、主に資金洗浄を防ぐための特定金融取引情報法でした。これにより事業者の届出や銀行の実名確認口座、取引監視の義務は生まれましたが、利用者が預けたお金や暗号資産をどう守るか、相場操縦をどう罰するかは空白のままでした。2022年に大型のアルゴリズム型ステーブルコインが崩壊し、海外の大手取引所が破綻したことで利用者保護の立法が加速し、暗号資産利用者保護法は2023年7月に公布され、1年後の2024年7月19日に施行されました。よく「第1段階の法律」と呼ばれるのは、利用者資産の保護と不公正取引の規制だけを先に盛り込み、暗号資産の発行・開示・事業者の認可といった市場全体の規律を次の段階に残したためです。
取引所が守るべきこと:預けたお金と暗号資産
利用者が取引所に入れたウォンは取引所自身が持つのではなく、銀行などの管理機関に預け、取引所の資産と分けて管理しなければなりません。取引所はこのお金を使えず、取引所が破綻したり届出が抹消されたりした場合は、管理機関が利用者に優先して返すことになっています。取引所はこの預り金の運用益の一部を預り金利用料として利用者に支払います。暗号資産については、利用者の分と同じ種類・同じ数量を実際に持っていなければならず、その経済的価値の80%以上をインターネットから切り離したコールドウォレットで保管する必要があります。インターネットにつながったウォレットに残る分については、ハッキングやシステム障害に備えた保険や共済に入るか、準備金を積み立てなければなりません。
- ウォン預り金:銀行などの管理機関が取引所の資産と分けて保管
- 預り金利用料:運用益の一部を利用者に支払う
- 暗号資産:利用者分と同じ種類・数量を保有、80%以上をコールド保管
- オンライン保管分:保険・共済への加入や準備金の積立
入出金を止めてよい場合
取引所は正当な理由なしに、利用者の暗号資産の入出金を勝手に止めることはできません。止められるのはシステム障害やハッキングのような事故、裁判所・捜査機関・金融当局の要請など法令が定めた理由に限られ、止める時はその理由を利用者に知らせなければなりません。そのため入出金停止のお知らせには、ネットワークの点検、ウォレットの整備、外部からの要請といった理由が書かれます。ただしこの規定で入出金停止そのものがなくなるわけではありません。特定の暗号資産の入出金が長く止まると、その韓国内の価格が海外と大きく離れることがあるので、停止のお知らせが付いた銘柄の価格差は特に注意して見る必要があります。
禁止された不公正取引と罰則
この法律は、株式市場の不公正取引の規制を暗号資産市場に持ち込みました。上場や上場廃止のようなまだ知られていない重要な情報を使った取引、示し合わせた売買や自分一人の売買で取引が活発に見えるよう装う相場操縦、うその情報を広めて利益を得る不正取引がすべて禁じられます。取引所が自ら発行した暗号資産を取引することも制限されます。違反すると1年以上の懲役か不当利得の3〜5倍にあたる罰金が科されることがあり、課徴金が課される場合もあり、不当利得が大きいほど罰は重くなります。取引所には異常な取引を常に監視し、不公正取引が疑われれば金融当局に知らせる義務があります。
- 未公開の重要情報の利用を禁止
- 仮装売買・馴れ合い売買などの相場操縦を禁止
- うその情報で利益を得る不正取引を禁止
- 取引所の異常取引の監視・通報義務
この法律が守ってくれないもの
この法律は、取引所が利用者の資産をきちんと保管し市場を公正に運営するための法律であって、投資の損失を防ぐ法律ではありません。暗号資産の価格が下がって生じた損失は誰も補償せず、銀行預金のように預金保険の制度が適用されるわけでもありません。法律が適用されるのは韓国に届け出た暗号資産事業者なので、韓国に届け出ていない海外の取引所や個人のウォレット、分散型サービスで受けた被害は、この法律で保護を受けるのが難しくなります。詐欺的なプロジェクトに投資して失ったお金が自動的に戻ることもありません。不公正取引で損をした場合は賠償を求める道がありますが、訴訟を経る必要があり、損害を証明するのは簡単ではありません。
- 価格下落による損失は補償されない
- 預金保険の制度は適用されない
- 韓国に未届出の海外取引所・個人ウォレット・分散型サービスは対象外
- 損害賠償には訴訟と立証が必要
第2段階の立法と残る課題(2026年10月時点)
第1段階の法律が空けておいた暗号資産の発行と開示、事業者の認可、ステーブルコインの規律は、いわゆる第2段階の立法であるデジタル資産基本法に盛り込む方向で議論されています。政府は2026年7月の下半期経済成長戦略でこの法律の立法を進めると表明しましたが、2026年10月時点で国会を通過していません。法人の市場参加については、金融委員会が2025年2月に示した段階的な計画に沿って、非営利法人や取引所などによる売却目的の取引が2025年6月から認められ、上場企業や専門投資家として登録した法人による投資目的の取引はまだ始まっていません。課税はこの法律ではなく所得税法が定めており、法律上の施行日は2027年1月1日です。いずれも変わりうる内容なので、最新の発表を確認してください。
- 発行・開示・認可・ステーブルコイン:デジタル資産基本法として議論中
- 法人の売却目的の取引:2025年6月から(非営利法人・取引所など)
- 上場企業・専門投資家法人の投資目的の取引:まだ施行前
- 課税:所得税法、法律上は2027年1月1日施行予定
利用者が自分で確かめること
初めて使う取引所なら、まず韓国の金融情報分析院が公開している暗号資産事業者の届出状況に名前があるかを確認します。預り金利用料率や入出金停止は取引所がお知らせで告知するので、通知を受け取れるようにしておくと安心です。不公正取引が疑われることに遭ったら金融監督院の通報窓口を、詐欺の被害なら警察を頼ります。このサイトのキムチプレミアム・レーダーは、韓国の取引所で入出金が止まっている銘柄を別に表示するので、停止のお知らせが国内外の価格差とともにどう現れるかを見られます。CoinRadar 市況レーダーは韓国のウォン市場の全銘柄について急騰・急落の通知を出しますが、急な値動きがそのまま相場操縦を意味するわけではなく、画面だけで取引の意図を見分けることはできません。
まとめと注意
暗号資産利用者保護法は、取引所に利用者のウォンと暗号資産を分けて安全に保管させ、未公開情報の利用や相場操縦を罰する法律です。しかし価格の下落で生じる損失はこの法律では守られず、韓国に届け出ていない事業者で受けた被害も保護の範囲外です。第2段階の立法、法人の参加、課税の日程は2026年10月時点でまだ進行中なので、韓国の金融委員会や国家法令情報センターの最新情報を確認してください。この記事は制度を説明したもので、法律相談や投資助言ではありません。
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